同人誌の義理買いで面倒が回避できるならそのほうがマシ
おたよりの中に、「初めてなので新刊は無料配布したい」という方がいらっしゃいます。
お話を伺ってみると、「お金をいただくのは申し訳ないから」という謙虚な方が非常に多いです。
「無料なら、相手に迷惑をかけないと思う」とか。
「無料なら、相手に喜んでもらえると思う」とか。
しかしそれは大きな勘違い。
無料だろうが要らない本は要らないし、欲しいと思う本なら100円だって1000円だってお支払いする。それが同人誌即売会の現実なのです。
目次
- 同人誌の義理買いで面倒が回避できるならそのほうがマシ
- 無料だと「ちゃんとした本」ほど手に取ってもらえない不思議
- 『対価をいただく』という経験は貴重
- 無料が全部悪いんじゃない
- 無配の本は自分から渡さない
無料だと「ちゃんとした本」ほど手に取ってもらえない不思議
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もしあなたが『無料なら気楽に手に取ってもらえるだろう』と思っているなら、それは甘い考えです。
同人誌即売会のメリットは、直接現場で欲しい本を手に取れること。
他のサークルさん目当てに足を運んでくれた方に、ついでに手に取ってもらえたら……そんな想いで新刊を無料配布する方がいらっしゃいます。
初めて同人誌を出す初心者の方ほど、まずは無料と考える方が多いようです。
しかし、無料配布のアイテムは、ある程度立派になってくると途端に手に取ってもらえなくなります。それは何故か。それは『え?こんな立派な本が無料でいいの?』とまず思うからです。
多くの人は、印刷にかかる手間と費用を知っていますし、何となく想像して分かってくれます。お金をかけて作ったものを無料でもらえるとなったら『いいんですか?』と思うのが普通です。
興味がない本は無料でも欲しくありませんし、逆にあなたの本に興味がある人ほど、対価を支払って堂々と手に取りたいのです。
むしろそういう人に出会う貴重な機会を経験するためにも、100円でもいいからお値段をつけるのをお勧めいたします。
無料だと、『無料だからとりあえず持ち帰る人』と、『あなたの作品が欲しくて持ち帰る人』の見分けがつきません。
立派な本ほど手に取られない理由は、もう一つあります。それは『本は手元に残るから』です。
持ち帰ると家の保管場所をとってしまいます。中身に興味のない本は本棚の場所をとるだけですので、わざわざ持ち帰りません。
誰かから誕生日プレゼントとして、興味のない分野の辞典や、使わない家電をもらって嬉しいでしょうか。コーヒーが苦手な人はコーヒーメーカーをもらっても困ります。
気持ちは嬉しいですが、保管場所や譲り先に困るでしょう。いただきものを譲るのだって気が引けます。なら最初から『要らない』と思ってしまいかねません。
これは余談ですが、『プレゼントにオススメのマグカップ〇選!』とかいう特集は、プレゼントの定番とされる中ではマグカップが一番いらないと思う私にとっては不思議な特集です。
大抵の家にはある物なので、食器をコレクションしている方でない限り外すと思っています(もちろん気持ちはとっても嬉しいです!)
無料で渡すこと・つまりプレゼントというものは、相手の気持ちを考えないかぎり自分の善意の押し付けになってしまいます。
無料配布をしたいという方の多くは、『自分が傷つきたくない』という本音を、『相手に迷惑をかけない』という勘違いにすり替えているのです。
『対価をいただく』という経験は貴重
よく考えてみれば、無料で置いてあるのに持ち帰ってもらえないほうが傷つきます。
また、せっかく持ち帰ってもらっても「無料だからだよね」と思ってしまって喜べず、自信につながりません。
有償のものと無料のものを並べておいてあるサークルさんをたまに見かけます。私もよくそうしています。
そういう時、通りすがりの一般参加者さんに黙って無料のものだけを持ち去られたら『無配だけかーいw』って思いませんか? いや別にいいんですけど、ダメじゃないし、いいんですけど~~~~~ん~~~~~。ぶっちゃけ複雑じゃありませんか?
こんな感じで、『無料』とは余計な負の感情のきっかけになることもあるのです。
無料配布は、本を買ってくれた方にノベルティとして差し上げるほうが、こちらも相手も気分がいいと思います。
これも余談なんですけど自分のスペースに売り子さんの無料配布本を置いていたら、隣の隣のサークル主が時間前にやってきて、私の本には目もくれず売り子さんの無配だけをサッと持って行ったことがあります。「いいですか?」と声はかけてもらえましたが、正直その人のことはちょっと嫌いになりました。
ダメって言えるわけないじゃん! 別にダメじゃないし~~~キィィ~! …でも別に誰も悪いことはしてない。
思い切ってお値段をつけて『お金を払ってもらえた』『お金を払ってもらえなかった』という体験をしたほうが試行錯誤の判断材料が多く、次につながります。
『お金を払ってもらえた』なら、買ってくれた人にとってそれくらいの価値があることが分かります。
『お金を払ってもらえなかった』なら、この値段では手に取ってもらえないことや、興味をもってもらえていないことが分かります。
頑張って作った本なのですから、頑張った分だけ何かを経験し、気づきを得ないと勿体ないです。
無料が全部悪いんじゃない
ここまで言っちゃうと無料配布自体を否定しているように見えるかもしれないので、訂正しておきます。無料が全部悪いわけではありません。
例えば差し入れのお菓子や、ついてくるメッセージカード、新刊を買うとついてくるノベルティなどなど、同人誌即売会にて無料で何かを頂ける機会は普通にありますし、それらはとても嬉しいです。
それに、私のためにわざわざスペースまで来て差し入れをくださる方の好意は全力で受け取るのが礼儀と思っています。好意には好意で返したいです。とっても嬉しいです。
無配の本は自分から渡さない
ただ、本来はお値段がついている本やグッズ等をそのまま無料でいただくのは心苦しいので、いただいてしまったらお金を払うか、代わりに私の本を無料で差し上げたりしないと気がすみません。
相手のことが好きな場合は、『無料では申し訳ないのでどうぞ』という気持ちで渡しますが、相手の作品にあまり興味がない場合は『要らない本を買うことになってしまったなぁ』『要らない本の代わりに自分の在庫が1冊減っちゃったな』って思っちゃいます。本当に申し訳ないですが……。
相手のことが好きで、交流が楽しくても、その人の作品に興味があるかはまた別の話です。
『善意なんだからごちゃごちゃ考えずに受け取ればいいじゃない』って言う人に限って、自分が同じことをして思ったような見返りがなかったらなんか言うんです。
お菓子や飲み物等の差し入れが喜ばれるのは、比較的安価であることや、消耗品だからです。もしくは、読み手からサークル主へのファン活動の一環だったり、サークル主同士のねぎらいの意味あいが強いからです。
高価なものや形として残るものをプレゼントするのは、相手との信頼関係が築かれてからにしましょう。
じゃあどうすればいいのかというと、無料のものに関しては、相手に選択してもらいましょう。
欲しいなら相手に持って行ってもらいましょう。自分のスペースに『無料です』とポップをつけて置いておきましょう。
自分がスペースに伺う側なら本ではなく、お菓子や飲み物などの消耗品などの『差し入れ』を渡しましょう。
どうしても本を渡したい場合は『〇〇ネタって大丈夫ですか?』と本の内容をちょっと話すとか『逆に気を遣わせちゃいますかねぇ』と様子を伺うとか、相手が断りやすい雰囲気を作ってあげましょう。
ただし、断られたからといって『〇〇ネタ大丈夫じゃなかった?』『私の本はいらないってこと?』と考えないようにしましょう。(ほら、やっぱり『自分から渡さない方がいい』ってなりません?)
ちなみに私は友人に自分の本を渡すときは余った本を『装丁の参考にでもして』って渡してます。あわよくば読んでほしいし、読んでもらえたら嬉しいですが期待はしません。
私も相手の本は誤字チェックでも頼まれていない限り、気が向かないと読まないです。そして、そんなことでは関係が壊れない信頼もちゃんとありますよ。
読まない本は邪魔なんじゃなかったの? と思ったかもしれませんが、好きな友達の本なら全然邪魔じゃないです。友人として今後も関係が続いていくので『あの時、ああいう本出してたよね~』っていう話の種になりさえすれば充分なんです。
それくらい信頼関係がないと、無料で物を押し付けるのはリスキーってことです。
話がいろいろ逸れてしまいましたが、最初の話題に戻りますと、結局は
『無料にするほうが色々と面倒な感情を生む』
『100円でも値段を付けたほうが余計なことを考えずに済む』
ということです。
特に初心者の方は、今後の値段付けや、自分の作品の価値基準、創作の方向性などの活動方針を決める材料を得るためにも、お値段をつけてみるのをお勧めします。
無料と100円の間には『対価を支払うか否か』の大きな壁があります。
その壁を乗り越えてもらえるかどうか、自分で試してみませんか?
最後に。
こういうことを書くと『私は100%善意で渡してるのにいらないなんてひどい』『ただただ好意で渡してる人もいるのに、こんな記事書いてひどい』『好意を否定するな』というご意見が届くことがありますが。
申し訳ございません!要らない本は、無料でも要らない!!
逆に相手に気を遣わせずにオフ本を無料で渡す上手いやり方があるなら、教えて欲しいです。
こんな複雑な記事をここまで読んでくださって、ありがとうございました。
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