「学ぶ」って楽しい！！　『ありす、宇宙までも』 - オタク女の手帳　腐女子と小説と二次創作同人誌

※この記事はnoteで公開したものを加筆修正しています。

　みなさん、勉強してますか？アンテナ、立ててますか？
　こんにちは！キダチです。
　今日はお気に入りの漫画の感想と紹介を！

　それは『ありす、宇宙までも』売野機子著
　です！

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(2025/12/15 12:50時点)
感想(3件)

◆主人公はセミリンガルの少女

　主人公のありすは、帰国子女の女の子。
　物語のスタート地点では小学６年生です。
　詳しいことは省略しますが、ありすは両親の教育方針で幼いころに海外に住んでいました。
　なので、英語と日本語を話すことができます。
　しかし、ありすの両親は幼いころに事故で亡くなってしまいました。
　ありすはそれ以来、日本の祖母の家で暮らしています。

　両親はありすをバイリンガルに育てたかったようですが、ありすの言語の習得が不十分なまま他界。
　ありすは、日本語も英語も中途半端なセミリンガルとなってしまいます。　
　セミリンガルとは、複数の言語を使用することができるものの、どれもが母国語レベルまで習熟していない状態のことを指す造語だそうです。

　ありすは回りの同級生に比べて言葉の習得が遅く、回りから「天然」「かわいい」と赤ちゃん扱いされています。
　ありすはそれが嫌なのですが、なぜ嫌だと感じるのか、自分がどんな気持ちなのかを言語化できないのです。

　人間は抽象的な悩みや疑問を言語化し、整理することで深く思考をすることができます。
　ありすは言葉を知らないので、深く思考することができないのです。
　発言すれば「かわいい～」「やっぱお前面白いな！」と笑われるので、ありすは人前で話すのを怖いと感じています。

　その過程で、勉強よりも運動のほうが好きになっていったようです。

◆俺が君を賢くする！

　同級生の犬星類くんとの出会いが、ありすの生活を大きく変えていきます。
　犬星くんはありすのセミリンガルの特性に気づき「君はバカじゃないかもしれないってこと！」と、ありすの勉強をみる決心をします。
　彼がまたいいキャラしてるんだ。

　犬星くんは勉強が得意で、文化系の賞を総なめしている天才児。
　彼が勉強熱心な理由がまた複雑なんですが、それは今回は割愛(ぜひ原作を読んでみてね！）
　犬星くんは中学１年生の春から、ありすの勉強をみてくれることになります。
　小学１年生の国語から面倒をみてあげるんですね。　

　ありすの「やりたいこと」を聞いて「宇宙飛行士になりたい」という夢を引き出し、そのためには今からどんな勉強をするべきなのかを逆算してカリキュラムを組んでくれるんです。

　犬星くんはただ勉強を教えるだけじゃなく、学ぶことの本質的な喜びや、勉強の楽しさそのものを教えてくれます。
　宇宙飛行士は結局何でもできる人じゃないとなれない、最難関といわれる職業です。そんな果てしない夢を二人で目指す、青春ストーリーというわけです。　

◆空や海を青いと感じるのは、青という言葉があるからだ

　これは犬星くんのセリフです。私が「ありす、宇宙までも」を３巻まで読み終えた中で一番印象に残っている言葉です。

　青いと感じることができるのは、「青い」という言葉を知っているから。
　これって、ありすの一番の課題である「言葉を学ぶこと」の本質を突いてると思うんですよね。
　言葉を知ることで、感情を言語化できる。
　言葉を知ることで、自分の気持ちを表現し伝えることができる。

　知ってるから見つけることができるし、知ってるから次の疑問が浮かぶわけです。これは勉強をする上で、楽しく学ぶ上でとても大切なことです。

　ありすは、どう見ても緑色のリンゴを、日本人が「青リンゴ」と表現することにとまどい、色の話題が苦手でした。
　犬星くんはそんなありすに「ホメロスが海を葡萄酒色に例えたこと」を例に出し、色の表現が普遍的になっていく過程を説明してくれるのです。

　犬星くんがいちはやくありすの苦手意識にきづき、持ち前の知識でそれを払拭していく流れが毎回読んでいてとても気持ちがいいのです。　
　楽しそうに勉強しているありすや、ありすの素直さに呼応して楽しそうに教える犬星くんを見ていると、なんだか涙が出てくるのです。
　大人になってから「勉強しておけばよかったなあ」と感じている人にこそ、読んでほしい作品です。